カワカミブックス

本の感想。かなり個人的。かなりネタバレ。

『玻璃の天』北村薫 文春文庫

玻璃の天 (文春文庫)

『玻璃の天』北村薫

ベッキーさんとわたし」シリーズ二作目。

今まで気がつかなかったんですが『鷺と雪』が三作目になるんですね、これ。

『鷺と雪』はなんだっけ?直木賞だっけ?
覚えてないけど、たしか大きな賞を授賞していたような覚えがあります。

国語便覧で見た覚えがあるから直木賞かな?
あの頃はまだ北村薫を知らなかった頃ですね、、。


推理はなかなか面白いです。特別難しいものではありませんが、北村薫は「日常の謎」の始祖といわれながらもその謎要素がだんだんとサブに寄ってってる気がします。

今回は一貫したテーマとして「公と私」があるのではないかと思います。

百合子さんの執事の私怨が表=公=仕事に現れ、
箏のお嬢さんは公=体面を捨て私=愛に走る。
そして最後の事件公=お上が裁けないから私刑に掛ける。

もっとも最後の事件は前二つのお話と異なり、それに関連してベッキーさんの正体が明らかになるっていうキーになってるんですね。

今まで公の部分しか英子に見せてこなかったベッキーさんの私の部分です。


今回桐原のお兄さん登場が少なかったですね。
前回はけっこう絡んでたイメージだったのでかってにサブメインくらいかと思ってました。
でも本当のサブメインは英子の兄ぐらいですね。
桐原のお嬢さんもお兄さんも、あとはもう一人仲の良かったお嬢さんも(この人は全く)登場しませんね。

今回初登場した軍人のお兄さんは『鷺と雪』では登場するんでしょうか、、


あとは時代背景の問題がだんだんと進んだせいで戦争の話題が増えてきましたね。

たぶん今まであの有名な『鷺と雪』を読んでこなかったのは戦争が絡んでるのを何かで見たからかなあ。

あんまり戦時の話は好みじゃないんですよ。
ただもう「ベッキーさんとわたし」シリーズはここまで読んだら最後戦争で二人がどうなるのか気になるものです。

そして北村薫の諭すような考え方は
わたし好きですね。

ベッキーさんの願う道は、時間を元に戻して、――乾原さんが、こうする前に止めることでしょ。もっといえば、――本当をいえば、お父様がとんでもないことになる前に帰返って、それを止めることでしょ。」

ベッキーさんの《正義》は誰も傷つけない。
自分が無力であることを知っている神の目線である。


最後の話がどうにもならなかった過去、
二番目の話がこれからどうにかなる未来、
最初の話がどうにもならなかった海老原さんと女中の過去とどうにかなりそうな百合子さんと東一郎さん、そして二つの内堀家の未来
といったところですかね。


北村薫の作品はもうただのミステリーではないですね。
文化的な内容に富んだ教養的な小説です。


これから夏休みで本をバンバン読めると思うので、早いところ『鷺と雪』を買っておきたいものです。



なんだかまとまらないなあ。
まあ、終わり。